海外における債権回収には、債務者が所在する国の弁護士の協力をえる方法と、国際的な債権回収会社に依頼する方法があります。
(1)海外の弁護士の協力をえる方法
弊所は海外の法律事務所のネットワークを持っており、事案ごとに現地の弁護士の協力をえて債権回収を進める体制を整えています。
アメリカ:弁護士は州ごとの資格です。そのため、原則として、資格のない州の法律に関する業務を行うことや裁判所で依頼者を代理することはできません。また、ある州の裁判所の判決は、そのままでは他の州では執行できません。弊所では、債務者の所在する州の弁護士の協力をえて債権回収を進めます。
イギリス:イングランド及びウェールズ、北アイルランド、スコットランドの3つの法域に分かれており、弁護士資格も法域ごとに認められます。弊所では、債務者の所在する法域の弁護士の協力をえて債権回収を進めます。
欧州・アジア:弊所では、欧州やアジアの各国の法律事務所の協力をえて債権回収を進める体制を整えています。
弁護士を使うことのメリットは、交渉による債権回収から裁判手続きまでを視野に入れて、当該案件に最適な債権回収の方法を検討できる点にあります。他方、デメリットは、必ずしも成功報酬制ではない点です。アメリカでは着手金なしの完全成功報酬制が主流です(ただし、少額の費用がかかります)。また、中国の提携事務所(北京達略法律事務所など)は完全成功報酬制で債権回収を引き受けます。他方、欧州には、完全成功報酬制の事務所、定額の手数料を請求する事務所や一定の場合に限って成功報酬制とする事務所などがあります。
(2)国際的な債権回収会社に依頼する方法
日本では、弁護士、司法書士、債権管理回収業に関する特別措置法により設立された債権回収会社(サービサー)の3者のみが債権回収を行うことができます。これに対して、海外には、数多くの国際的な債権回収会社が存在し、交渉による債権回収の主役を担っています。完全成功報酬制ですので、裁判手続きへの移行を視野に入れない場合には、債権回収会社に回収を依頼することが有力な選択肢になります。
日本貿易振興機構(ジェトロ)のHPには、輸出代金の回収滞りの打開策として、「最初からある程度の損金費用を覚悟するのであれば、債権回収会社(Collection Agency)に依頼する方法もあります。この場合、弁護士等のように初期費用はかからず、回収できた金額に対して何割かの成功報酬を支払うことになります。ただし、債権回収会社の事情は国や地域により異なります。」という記述があります。また、株式会社日本貿易保険は、外国において債権回収を専門に扱う事業会社を利用したサービサー回収制度を運営しています。同社のHPによれば、債権回収会社は150年の歴史を持ち、 米国では約5,000社、欧州では約2,000社が事業活動を行っているとのことです。
このように海外では債権回収会社を利用することが普及しています。債権回収会社に依頼する場合には、何よりも信用ある会社を選ぶことが重要になります。